2018
08.14

NHK 「ラジオ英会話」学習方法ガイダンス 2

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月日が過ぎるのははやいものです。
4月から始まったこの講座も9月で6ヶ月となり、ちょうど折り返しとなります。たいへんうれしいことにこの講座は異例の好評をもって迎えられ、思いもかけない程数多くの方に楽しんで戴いています。またスタッフ一同驚いているのは、(通例語学テキストは「やる気のでる」4月をピークに漸減していくものですが)「ラジオ英会話」テキストは読者がほとんど減っていないということ。つまり4月に聞き始めて戴いた方々が今でも熱心に聴き続けてくださっているのです。番組の作り手としてこれほどうれしいことはありません。スタッフ一同に代わり深く感謝致します。また、SNSやその他で、ラジオ英会話を中心に勉強グループができているということも伺っています。多くの高校でも講座聴取の推奨だけでなく、確認テストを行うなど積極的に活用が行われているようですね。

『英会話』の学習を文法から始めること

「ラジオ『英会話』」で文法獲得を主たる目標とすることにはさまざまな意見があろうかと思います。ただ、日本語と大きく性質を異にする英語を学習するに当たってその基本的な性質を知ることは、たいへん有益な「はじめの一歩」です。英語で許された表現配列とそれを生成するごく簡単な原理、意識に知ることは、その後の会話学習の成否を大きく左右するはずです。徒手空拳で偶然出会った文を覚える作業を続けていても効率的な学習はできません。なぜ文がそういった形をしているのかがわからない・あるいはその場の手探りにならざるを得ないからです。他方、文法に一通り目配せを行っておけば、あらゆる学習は「こういった表現もあるのだから覚えておこう」という単純な表現習熟の作業となります。「英会話」に限らず英語運用力の基本は、単純な文法と適切な「英語観」にあると私は考えています。

この講座で学習を進めている英文法には2つの特徴があります。

①単純な原理からなる文法

これまでの学校(伝統)文法は相互にあまり連関のない文法事項集でしたが、それでは「英語観」は生まれません。「英語はこんなことば」は言うに及ばず、「英語はこうできている」から「おそらくこうやればいい」といった見通しも利かないのです。この講座では体系的な文法を学んでいただいています。体系とは「簡単な原理」から個々の(従来無関係であったと思われてきた)文法事項を派生する、という意味においてです。
現在完了形(テキスト5月号)を含む「完了形」を「ある次点までに_」と定義し、現在完了形の「現在に至る(=現在に迫ってくる)」を派生し、さらに完了・経験・結果・継続を派生させる—もっとも単純にはそうした考え方を取っています。体系的に捉えることによって、英文法は細かな文法事項の暗記からコンパクトな「語感」への習熟となります。

この文法がもつ「体系」のもっとも重要な例は「語順」です。よく知られているのは英語と日本語の語順における(主語を除く)鏡像関係です。英語で最初にくる要素が日本語では文末になる—これが日本人が英語を話せなかった最大の理由ですが、この文法では語順のちがいを克服するために、英語の語順の原理を学習初日から繰り返し紹介しています。英語は文中の配置により意味が付与される「配置の言葉」であり、日本語と比べ格段に語順の理解が重要となります。

①基本文型
標準的な学校文法で「5文型」と呼んでいるものです。「一億人の英文法」(東進ブックス)では4文型を提唱し、目的格補語の文型は「説明ルール」により生まれる派生的な「応用文型」としましたが、同じことです。また名詞・形容詞に限られる「補語」を「説明語句」と置き換え広げることによって、いわゆる知覚構文・使役構文・to不定詞もこの形に含めています。文型には5種類の配置パターンが記述されますが、重要なことは「配置の言葉」英語では、「文型自体」に意味が宿っているということです。各文型と文型が持つ意味への理解が重要です。

②修飾の語順ルール「指定ルール」「説明ルール」
英語文は文型に従って強固な構造をもっていますが、この構造を彩りさまざまな意味を加えるのが修飾要素です。修飾要素の語順を決めるのが「指定ルール(前に置かれた修飾要素は後ろを指定する)」と「説明ルール(後ろに置かれた修飾要素は前を説明する」です。形容詞・副詞などはもちろん、冠詞・助動詞・否定辞notなどもこの2つのルールに従います。当然のことながら時制要素も「指定ルール」によって配列されていると論じることは容易ですが、学習効率にさしたる利点はなく予備的な議論を要するため、このルールからは除外しています。

この文法では英語文を以上の位置に関する通則によって生み出すことを基本としており、言い方を変えれば、これだけの学習によって英語文を「語順通りに」生成することを可能にしています。

今から「ラジオ英会話」を始める方は、テキスト各巻の冒頭にある2ページの語順則(下記)に必ず目を通してください。


「ラジオ英会話」8月号より抜粋

 この位置の通則により、今月の形容詞・副詞、或いは来月の否定・比較に関連する文法事項は、実践に供することができるレベルで整理簡略化されます。またto不定詞・動詞-ing形・各種節の学習も今までより遙かに容易になっていきます。「配置のことば」「語順」という新しい英語への見方が、学校文法が達成できなかった文法の会話への適用を可能にするのです。

ネイティブの直観

本講座では、説明の起点となる文例に関してほぼ必ずネイティブスピーカーの印象、意識などを確認しています。周知のように、現状英語はネイティブスピーカーだけでなく多くのノンネイティブにも活用されています。実際ビジネスの現場などでは、ネイティブスピーカーと話す機会よりもノンネイティブ同士行う英会話の方が圧倒的に高頻度です。そのため「簡略化英語でよい」「ネイティブスピーカーの語感を参考にする必要はない」等の意見も散見されます。が、私はこうした考えに与しません。

ネイティブスピーカーの完全な英語は、長い年月を経て、誰でもアクセス可能な使いやすい体系となっています(だからこそ、誰しも使うことができるのです)。そしてもちろん必要とする内容を十分表すことのできる深みを持っています。一方、簡略化を目指した「誰か」が恣意的に作り上げたシステムはそうした各部の整合性も深みも保証することはできません。私見ですが、おそらく複雑な文の構成は却ってむずかしく収拾がつかなくなるのではないでしょうか。「簡略化」は「ネイティブスピーカーのシステムは複雑だ」という前提に基づいているように思いますが、それはまちがっています。先の位置に関する通則を大きく逸脱するような変則性は、英語にはありません。ネイティブの頭の中にある意識のあり方を知る、それが英語を学ぶ最短距離だと私は考えています。

続く

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